●解 説 森内俊之名人 藤井 猛九段 先崎 学八段 木村一基八段 中村太地六段
●聞き手 上田初美女王 矢内理絵子女流四段 鈴木環那女流二段 藤田 綾女流初段 室谷由紀女流初段
森内俊之名人 (プロフィール詳細はこちら)
ファンの皆さんもそうだと思いますが、羽生善治三冠vs橋本崇載八段でしょう。それぞれ挑戦権・残留がかかっていますからね。内容次第ではすごく盛り上がるんじゃないんでしょうか。橋本八段はA級に上がってから苦しい展開が続いていましたが、前局では勝ってますから、いい風に乗れるんではないでしょうか。ピンチの中でどう勝負するのか注目したいです。
一局一局が本当に長丁場で、一瞬の強さよりも長く戦える強さ。それが必要な棋戦だと思います。 私も16才でプロになり、長い間、順位戦で戦ってきて、うれしい思いも悔しい思いもしてきました。 今でも忘れられないくらい悔しかったのは、まだB級2組にいたころのことです。その期では8連勝、順位戦では(前々期から数えて)26連勝していて、快調だったんですが、9連勝を前に連勝を止められてしまって。それはもう悔しかったです。 自分ではそんなつもりはないのですが、どこかで油断していたのかもしれませんね。目を覚まされたような気持でした。その経験があったからこそ、今の自分があるんだと思います。
藤井 猛九段 (プロフィール詳細はこちら)
羽生善治三冠vs橋本崇載八段ですね。 お二人ともにとって最大の正念場ですから。 谷川浩司九段も苦しい状況で、将棋ファンのみなさんからの注目も高いと思います。将棋界の大物の勝負どころは目を見張るものがありますよね。
順位戦とは「山登り」のようなものですかね。棋士はみんなプロになった時から、順位戦という山を登り始めて、引退するまで、ずっとその山の頂を目指して進み続ける。登っている間は本当につらいですよ(笑)。まさに山登りです。
先崎 学八段 (プロフィール詳細はこちら)
注目対局は羽生善治三冠vs橋本崇載八段。 名人への挑戦権をかけた羽生三冠と残留をかけて戦う橋本八段の対局は誰もが気になるところでしょう。 橋本八段の全力で将棋を指す姿は必見だと思います。
「生活感」のある棋戦です。 (著書千駄ヶ谷市場にも書いてあるが)竜王戦は「頭金を作る棋戦」であり、順位戦は「ローンを支払う棋戦」であると思います。
木村一基八段 (プロフィール詳細はこちら)
谷川浩司九段vs屋敷伸之九段の対局は気になります。 谷川九段の残留をかけた対局ですが、「A級棋士として負けたくない」、そんな姿勢で戦う屋敷九段にも注目です。 また順位が上がるほど、時間の長い棋戦では辛抱強い・粘り強い手が増えるので、ファンの皆様にはじっくりと堪能してほしいです。
すべての棋士にとって本当に特別で大事な棋戦ですね。 その年のランクを決めるものであり、棋士としてのプライドをかけて戦う。上を目指してはいますが、昇級・降級関係なく、すべての棋士が負けられないと思っているんです。
中村太地六段 (プロフィール詳細はこちら)
羽生善治三冠vs橋本崇載八段の対局です。 両者とも譲れない対局になるので、見逃せないですね。 (対局ではなく)一人を選ぶとすれば、谷川浩司九段。 僕がプロ棋士を目指しはじめた時には、すでに一線で活躍されていて、今もなお一線で戦い続けている。かっこういいなと思います。会長になられて、初の順位戦。会長職でお忙しい中、どう戦うのか注目です。
順位戦とは厳しく長い戦いですね。 他の棋戦であれば、トーナメント制のものも多いので、その日限りの「勝ち」・「負け」となりますが、順位戦は今年一年の成績が次の一年に響いてしまう棋戦。ベテラン棋士でも一週間前から調整に入る方がいるほどの、棋士人生を通しての長い戦いなんです。
上田初美女王 (プロフィール詳細はこちら)
注目している対局は羽生善治三冠と橋本崇載八段の対局です。昇級・残留も注目ポイントですが、面白い将棋を指すお二人なので、どんな将棋になるのかすごく興味があります。 見どころ満載の対局になりそうなので、期待しています。
早指しと長い時間かける手とでは、将棋の指し方が変わります。 将棋ファンの方や他の先生方もよく言われますが、棋戦の中で最も持ち時間の長い順位戦では「いかにも順位戦!」というような手を多く見ることができます。 他の棋戦と比べると独特な棋戦なのかもしれません。
矢内理絵子女流四段 (プロフィール詳細はこちら)
羽生善治三冠vs橋本崇載八段の対局です。どうしても、そこを注目してしまいます。 やはり名人戦への挑戦権とA級残留のかかった、両棋士にとっての大一番になりますので。 個人的にも、きっとかなりの気合が入っているであろう橋本八段の戦いぶりに注目しています。
順位戦は棋士たちの人生、歩みのような印象があります。 ですので、一戦一戦が非常に重たいというか、棋士たちの思いの強さを感じます。
鈴木環那女流二段 (プロフィール詳細はこちら)
降級のかかった対局に注目される将棋ファンの方もいると思いますが、私はやっぱり羽生善治三冠vs橋本崇載八段の対局と三浦弘行八段vs高橋道雄九段の名人位への挑戦者争いが気になります。わがままを言うならプレーオフも見てみたいです。だってものすごく贅沢な対局ですよ(笑)。 深浦康市九段にも注目しています。普段からよくお世話になっていて、この前もお会いした時に深浦九段が「(順位戦では)いい思いがなかなかできていないから、頑張りたい」と仰っていたので。頑張っている姿に注目したいです。
女流棋界に『順位戦』はないし、個人的にも今年ほどしっかりと関わることもなかったので、本当に未知の世界です。 順位戦は一瞬の差で勝負がつき、ランクがファンの方にも見える形でついてしまう。それってすごいプレッシャーだなって思います。それもほとんど一年間、そのプレッシャーの中で戦い抜かなければいけない。そう考えると女流に『順位戦』はあまり欲しくありません(笑)。将棋ファンの方にとっては長い時間、歴史的な対局を楽しんでいただけると思います!
藤田 綾女流初段 (プロフィール詳細はこちら)
谷川浩司九段vs屋敷伸之九段です。 谷川九段にとって、残留・降級を決める一戦ですから、緊張感あふれる対局になりそうですよね。 それに、色々なところで話してますけど、私は子供のころから谷川九段のファンなんです(笑)。それも注目している理由ですね。 谷川九段の「光速流」の本を読んで勉強してきましたし、今でも時々手にとっては、読み返してしまいます。 一人の将棋ファンとしてテレビを見るんだとしたら、きっとずっと谷川九段vs屋敷九段の対局にかじりついてますね(笑)。
クラス分けされたリーグ戦方式で、ほんの少しの差で勝負が決まり、その勝負の積み重ねが昇級・降級に繋がってくる。すべての対局が「命がけの対局」。 テレビ越しにも、その緊張感や、一手にかける凄みが伝わると思います。 順位戦をご覧になる方には、対局のはじまりから終わりまで、棋士の「真剣」を見逃さず、順位戦を楽しんでほしいです。
室谷由紀女流初段 (プロフィール詳細はこちら)
谷川浩司九段vs屋敷伸之九段の対局に注目しています。 谷川九段のA級残留をかけた対局でもありますし、なにより同じ関西(所属)の棋士として、注目しています。 挑戦権争いでもある羽生善治三冠vs橋本崇載八段と三浦弘行八段vs高橋道雄九段の対局も、もちろん注目です! 関西でも最終日にはファンの方がすごい集まります。順位戦A級ラストは皆さんも気になるものなんだと思います。
リーグ戦なので、一つ一つの対局をすごく大切にしなくてはいけなくて、棋士たちはみんなすごく気合が入っています。 だから順位戦を見るファンの皆様も、ワクワクドキドキハラハラして、楽しんで見ることができるんじゃないんでしょうか。