第63期王将戦七番勝負渡辺明王将対羽生善治三冠第3局

 第63期王将戦七番勝負第3局は1月29、30日に神奈川県足柄下郡箱根町「ホテル花月園」にて行われた。渡辺王将の先手となった本局は、後手の羽生三冠の趣向で急戦矢倉の将棋となった。両者の間で急戦矢倉といえば、渡辺初代永世竜王が誕生した第21期竜王戦七番勝負(2008年)が呼び起こされる。本局は急戦矢倉の中でもまだ定跡が整備されていない将棋となったが、34手目△6四歩の局面までは第60期王座戦五番勝負第1局(▲羽生二冠―△渡辺王座)で両者経験している。39手目▲6五歩で戦いが始まり、堅い玉形を活かして攻める渡辺好みの将棋となったかと思われたが、対する羽生も玉頭に嫌みを付けながら曲線的な指し回しで対抗していく。ねじり合いの応酬が続き、形勢判断が難しい局面のまま1日目が終了した。
 封じ手となった49手目▲5五歩から2日目がスタート。2日目に入ってもはっきりと形勢に差が付かず、優劣不明のまま最終盤までもつれることも予想されたが、ここから意外な速さで局面が進んでいくことに。61手目から▲8三歩~▲8四歩と連打の歩で飛車に当てた手に対し、64手目△3九角とこちらも飛車に当て返した手が鋭い切り返し。ここから徐々に羽生がペースを掴んでいき、74手目△8七歩成と急所にと金が出来てはっきりと後手優勢となった。最後は羽生が素早く先手玉を寄せ、82手にて勝利。終局時刻が15時49分と早い時間帯での決着となった。羽生は七番勝負初勝利でシリーズ成績を1勝2敗とし、反撃ののろしを上げた。

 この模様は、第3局の副立会いを務めた飯塚祐紀七段が出演する徹底解説番組 「第63期王将戦七番勝負」にて3月19日(水)午後10時~より放送。

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