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2014.10.9

第7回 アマチュア銀河戦東三河大会:思わぬ幕切れ 

 前回アマチュア銀河戦沖縄大会について書きましたが、所変われば何とやらという言葉があるように、地区によって大会の様相も変わり、また大会毎にドラマが起きるものです。今回は思わぬ結末となった愛知県豊橋市での大会の様子を紹介します。
 開会前。続々と選手が集まり、早速数名にインタビューをしてみますが、誰に聞いても「1勝が目標」と言うばかり。謙虚な方が多いのでしょうか?
 午前中は僕はジュニアの部の手合係。ジュニアは総当たりで行われたのですが、実力が拮抗している子が何人かいて、これは面白くなりそうだと思ってみていると、案の定同率一位が3人出てしまいました。三つ巴の指し直しを制したのは鈴木峻司くん。鈴木くんは初戦黒星スタートからの優勝で、腐らずに最善を尽くしたのが結果に繋がった格好です。
 ジュニアの部が終わるころ、ちょうど一般の部の決勝戦が始まります。対戦カードは、運営兼選手というハードワークの中勝ち上がって来た櫻井秀哉さんと、高校生の遠山明さん。ともに居飛車党の本格派で、ここまでの戦いぶりを見ると、二人とも奇をてらうこともなく王道の将棋で勝ち進んできた印象です。
 決勝戦は、本格派の両者らしく角換わりの最新型になり、櫻井さんが猛然と攻め込みます。対して遠山さんも辛抱強く受け続けます。やがて入玉の含みも出てきて完全に長期戦の様相。となると、気になるのは残り時間。何しろ、この大会は30分切れ負けというルールなのです。櫻井さんの残り時間は3分を切っているのに対して遠山さんは10分程余しています。本来、櫻井さん程の実力ならば、3分もあれば一局指すのに十分ですが、局面はちょうど勝負所。下手な手を指せば遠山さんが持ち時間をつぎこんで咎めに来るのは明らか。従って簡単には指すことができません。将棋で負けるか、時間切れで負けるか。八方塞がりの状況で選択したのは思い切った攻めの手。しかし、これは自陣の守りを放棄した、本来ならば致命的なミスでした。
 ところが、ここで事件が起こります。遠山さんも勝ちを目前にして慎重さを欠いてしまったか、なんと二歩を打ってしまったのです。突然の終局。ほっとしながらも複雑な表情の櫻井さん。遠山さんは二歩を打った局面をこれ以上眺めているのが辛いのか、すぐに違う手を示して「これならどうでしたか?」と感想戦に入ります。

九死に一生を得た櫻井さん。拡大すると、持ち時間が切れそうなことが分かる。このまま行けば結果は逆だったか……
※写真をクリックすると拡大写真が表示されます

 まさかの結末となったものの、結果は結果。表彰式で賞状を受け取ると、ようやく笑みを浮かべた櫻井さん。「長いこと将棋をやってきて、代表になるのは初めてなのでうれしいです」と感想を述べました。ネット予選はさらに持ち時間が短くなるのが少し心配ではありますが、力を出し切って欲しいものです。


 当コラムは、二週に一度のペースで更新していく予定です。

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