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2015.02.05

第12回 王将戦第1局での新手 

 現代のプロの将棋は、研究の重要性が非常に高まっていると言われています。本来、将棋において実力の差が最もでるのは中終盤です。しかし、お互いプロ同士だとそこで簡単には差がつかないケースも多々あり、そのような場合は研究の段階で少しでもリードを奪っておきたいということになるのでしょう。
 1月11、12日に行われた第64期王将戦第1局。既報の通り渡辺明王将が郷田真隆九段を破り先勝しましたが、この対局でも研究がキーポイントとなりました。

将戦第1局が行われた静岡県の掛川城。中央に天守閣が映っているが、実際の対局場はその隣に位置する二の丸茶室である。

  対局初日。ものすごいスピードで角換わりの定跡形へと進んで行きますが、先手の渡辺王将が選んだ作戦に、控室では意外そうな声が挙がります。それもそのはず、その作戦は先手自信なしとされている定跡だったのです。控室では「渡辺王将は絶対に何か用意をしているはず」とささやかれますが、肝心の「何か」が分かりません。そこに現れたのが、現地での指導対局会を終えた西尾明六段。西尾六段は検討に加わるなり「最近こういう手が研究されているらしいですよ」と指摘。その手は銀をただで捨てる奇抜な手なのですが、検討してみるとかなり有力で、後手がどう指しても先手のペースとなるようです。「渡辺王将はこの手を用意してきたに違いない」と感心する控室。しばらくして渡辺王将が着手します。59手目、▲5五銀左。渡辺王将の新手は、果たして控室で噂されていたものと同じでした。
 控室の次の興味は、郷田九段がこの手を知っていたかどうかに移ります。郷田九段は、序盤の情報収集よりも自分の力で指すことを重視するタイプの棋士。控室では、恐らく知らなかっただろうと推測され、それを裏付けるかのように郷田九段は2時間25分の長考に沈み、そのまま封じ手となりました。
 そして翌日の再開後は、新手を成功させた渡辺王将のペースで進み、途中難しいところもあったものの勝利を収めました。
 気になる新手について、渡辺王将は「この局面になったら指してみたかった手」とあらかじめ研究してあった手であることを肯定しました。それどころか自身のブログで、自分で考えたのではなく人から聞いた手であることを後日明かすなど、あっさりしたもの。

封じ手を渡す郷田九段(手前)。渡辺王将の研究手の前に、2時間25分の長考を余儀なくされた。

 対する郷田九段は「潜在的には知っていたが、対局中は忘れていた」とコメント。知らなかっただろうと推測した控室の読みは外れましたが、突き詰めて研究していた訳ではないようで、研究の差が勝敗を分ける一因となったとも言えます。
 さて、ここまで読んで下さった方の中には、研究さえしておけば簡単に勝てると思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際にはそのようなケースはほとんどありません。そもそも研究手が失敗に終わるケースも非常に多いですし、仮に研究が功を奏してペースを握ったとしても、それを勝利に結び付けるためには結局自身の実力が必要になってくるのです。僕は、郷田九段が相手の研究にはまりながらも逆転勝ちを収める場面を、過去に何度も目の当たりにしています。今回は渡辺王将が2日目に的確に指し続けたからこそ、勝利に結び付けることができたということを忘れてはいけません。
 
 当コラムは、二・三週に一度のペースで更新していく予定です。 また、皆様のご意見ご感想、取り上げてほしい題材などお待ちしております!お問い合わせメールフォームよりお送りください。
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