2015.04.21
第15回 詰将棋解答選手権レポート |
3月29日、会場の豊島区勤労福祉会館に着くと、既に大勢の人。この大会は参加資格に制限がないため、プロ棋士・奨励会員・アマチュア強豪などいろいろな人が参加しています。行方八段や広瀬八段といったA級棋士の姿も。そして忘れてはいけない優勝候補が、詰将棋作家の方々。詰将棋の専門家は解く方もやはり強いようで、前年度の優勝者は有名詰将棋作家の若島正さんでした。望みさえすれば、このようなすごい人たちと同じ土俵で勝負できるというのが、解答選手権の魅力の一つです。
開始前の会場内は雑談をしている人が多く「多くの人が席に着いて瞑想している」光景を想像していた僕は、少し拍子抜け。しかし、ルール説明が始まるころにはさすがにピリピリとした空気へと変わります。
出題される問題は前半5問・後半5問の計10問。制限時間は前後半各90分で、気になる手数は最長でなんと39手!そして審判長の号令と共に、一斉に問題用紙をめくる音が聞こえてきます。まるで学校の試験を思い起こさせるような雰囲気ですが、一つだけ大きく異なる点があります。それは、あちこちから響いてくる駒音。この大会は、選手一人一人に盤駒が用意され、それを使いながら解いても良いことになっているのです。僕の見た限りでは、アマチュア選手の多くが盤駒を使用、一方プロや奨励会員は使わずに頭の中だけで解いているようでした。
前半戦正解発表の様子。この大会では、トッププロから小学生まで、同じ土俵で勝負をする。
選手からすればあっという間の90分が過ぎ、タイムアップ。あちこちから聞こえてくるため息。休む間もなく正解発表、そして解説が始まります。解く側からすれば鬼のような難易度でも、出題者からすればどこ吹く風のようで「この問題も単純な問題で……」という解説には選手達も思わず苦笑。
解説が終わった直後、前半戦の順位が発表されますが、東京の全問正解者はなんとゼロ。このことからも、問題の難易度が並大抵のものではないことが分かります。「全然ダメ。もう帰りたい」と選手として参加の某記者。
休憩をはさんで後半戦が開始。休憩中の会場では「前半戦が難しかったから後半戦は少し易しくなるのでは」という願望交じりの(?)声も聞かれましたが、現実はどうやら厳しかったようで、途中退出者はゼロ人。
タイムアップ後は前半戦同様解説が行われましたが、緊張の糸が切れたのか、もはや聞いていない人もちらほら。と、ここで同時開催されていた大阪会場の結果速報が入ってきて、奨励会の藤井聡太二段が参加者唯一の全問正解で優勝確定との知らせに、どよめく場内。藤井二段は弱冠12歳という指し将棋の有望株ですが、同時に詰将棋の作家としても評価されています。今回は解く側でもその実力を証明しました。全体2位に入ったのは東京会場で参加の詰将棋作家の山田康平さん。「今日は勘が冴えていました」と謙虚に喜びを語りました。3位は上位常連の宮田六段で、貫録の入賞と言ったところでしょうか。
1問目がこちら。この問題は11手詰だが、選手権本番では手数が分からないようになっている。腕に自信のある方はぜひ挑戦して……いや、やはりしない方が良いかもしれません。正解は「詰将棋解答選手権ブログ」にて。
さて、この大会は冒頭で述べたように、誰でも参加することができます。今回はチャンピオン戦の模様をレポートしましたが、難度が低めの初級の部や一般の部も設けられているので、興味を持たれた方はぜひ来年参加してみてはいかがでしょうか。
詰将棋解答選手権各クラスの情報は「詰将棋解答選手権ブログ」にてご覧下さい。
http://blog.goo.ne.jp/shogi-problem
*詰将棋では攻め方の持駒が余らないというルールがあるため、持駒が余る手順は作意ではないはず(=考える必要がない)という意味。
当コラムは、二・三週に一度のペースで更新していく予定です。
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