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2017.04.17

第31回 アマ銀河の挑戦

 第6回アマチュア銀河・井上輝彦さんの武器は「角交換振り飛車」と「早指し」。アマ銀河戦優勝の際は、なんと全対局で角交換振り飛車を使用。対戦相手からすれば、そこまで指し慣れている戦法を使われるだけでも相当なプレッシャーですが、さらにそれを早指しでビシビシと進められては、もはや自分のペースを乱さないようにするだけでも一苦労かもしれません。
 前回の最後でも触れたとおり、ジュニア銀河の伊藤君を退けた井上さんはベスト8へ。 余勢を駆って準々決勝も制し、アマ銀河としては初めて、大会2日目へとコマを進めました。
 翌日。ここからはスタジオでの対局となり、ガラッと環境が変わります。準決勝の相手はアマ名人・天野啓吾さん。この対局は相振り飛車に。角交換振り飛車は、対抗型*1専用の戦法のため、相手が振り飛車ならば使えません。得意戦法を封じられた格好となった井上さんですが、強い人は何を指しても強いもの。この将棋も長手数の末に攻め倒し、ついに決勝に進出となりました。
 決勝戦は居飛車党の小山怜央さん(アマ準竜王)と。となれば必然的に戦型は角交換振り飛車へ。両者ともに指し慣れた形なのか、あっという間に終盤戦に突入する展開となりました。互いの玉が接近する最終盤「勝ちだと思っていた(井上)」局面で小山さんに妙手を指され、残念ながら快進撃もここまで。とはいえ準優勝は素晴らしい結果で、アマ銀河戦代表としては過去最高の成績となりました。

表彰式の模様。左から天野啓吾さん(3位)、小山怜央さん(優勝)、井上輝彦さん(準優勝)、長森優作さん(3位)

 「最後は勝ったと思ったんですけどね」表彰式を終えた後、井上さんは決勝戦を振り返ってそう語りました。スタジオでは普段通り指せましたか? と聞くと「スタジオ対局って、一文字駒を使う*2じゃないですか。実はそれも対策してきてたんですよ」と予想外の答え。「普段は将棋ウォーズ*3で指してるんですけど、画面上の駒を一文字駒に設定して練習してきたんです」何とも面白い対策ですが、裏を返せば最初からスタジオ対局に残るつもりで臨んでいたということ。穏やかな物腰の裏に強烈な自信が見えた瞬間でした。
 井上さんの勉強方法は非常に現代的。練習対局はネットのみ、研究方法はソフト同士の対戦をひたすら観戦するというもので、デジタルを徹底追及しています。驚くべきことに、将棋盤さえ持っていないとのこと。
 「ネット対局は、強い相手とガンガン指せることが魅力ですね」と語る井上さん。特にデメリットも感じないそうです。
 井上さんにとって盤駒を使ったリアル対局は、もはや不要のものなのでは? そんなことを聞くと「対面で指すと相手の気持ちが伝わってくるんです。そこはリアル対局にしかない魅力ですね」続けて「ネット対局は気楽に指せますし、リアル対局は真剣勝負の雰囲気が味わえます。それぞれの良さがあると思います」と、そこはしっかり否定されました。
 井上さんは、今秋放送開始の第26期銀河戦において、アマ銀河として出場権を獲得しています。最後に抱負を聞いてみると「何とか1勝が目標です」という返事。誰と指してみたいですか? という質問には「藤井聡太四段*4……とはやっぱり当たりたくないですね」と笑って、取材はお開きとなりました。

*1居飛車vs振り飛車を総称して「対抗型」と呼ぶ。
*2テレビで放送するため、駒の文字が視聴者に見えやすいよう一文字駒を使うことが多い。
*3有名なオンライン将棋アプリ。
*42017年4月14日現在、デビューから12戦無敗で世間の注目を集める大型新人。

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